#「万博行こーぜ!」(万博1回目) |
5月22日(土)、午後11時半。
友人と飲みながら喋っていると、万博の話題になった。
「あー万博行きたいなぁ。」
「一回は行っときたいよね。」
「でもチケットどこで買ったらいいかよくわからんし、土日はすげぇ
混んでそうだよね。だって日本館とか2時間半待ちっていうじゃん。」
「"夜券"って言って、夕方から入れるチケットがあるらしいよ。
パビリオンは夜10時くらいまでやってて、夜は人少ないみたい。」
「マジで!?よし、じゃあ明日の夕方行こーぜ!」
こうして翌日の万博行きが急遽決まった。完全に酔った勢いである。
―5月23日(日)。
午後3時半過ぎ、まずは古北の専門ブースで情報収集。
万博のチケットは郵便局や銀行などで売ってると言われていたが
当日券は売っていないことが判明し、内心かなり焦っていた。
すいません、今から万博行きたいんですけど…。
若い女性スタッフが懇切丁寧に説明してくれた。
特に中国でこういう手厚いサービスを受けると清清しい気分になる。
結論:当日券は現地の入口で買えるらしい。
噂通り「夜券」もあり、馬当路を除く全ての入口で販売しているという。
最大の懸念事項がクリアになり、胸を撫で下ろす。
また、入口は各国のパビリオンがある浦東側ではなく
企業館などがある浦西側の方が比較的空いてるらしい。
これで完璧だ。
地下鉄人民広場駅・8号線のホームで友人と合流。
4駅先の西蔵南路で地下鉄を下り、いざ万博会場へ。
友人は同年会で知り合った女の子で、復旦大学の留学生。
そして友人が連れてきた留学生仲間2人はいずれも現役女子大生だった。
我ながら恐ろしいほどのリア充っぷりである。
―午後5時過ぎ。
万博入場券ゲット!!
楽勝。会場から道を挟んだ対面にあるチケット売り場は
本当にガラガラで、1秒も並ぶことなく手に入れることに成功した。
はやる気持ちを抑えながら、入場ゲートへ向かって歩く。
「…!?」
ガラガラ。
意図的に時間帯を遅らせ、また比較的混雑が少ないとされる浦西側から入ったのだが、
想像を遥かに上回る人の少なさ。幾重にも重なった白い柵が全く意味をなしていない。
ともあれ、愛知万博へ行きそびれた僕にとっては念願の万博初体験。
企業館が並ぶエリアに向かって歩きながら感慨に耽る。
奥の方でパレードをやっているのだが、人影はまばら。
近づいて見てみても、マスコットキャラの海宝はどこか寂しげな表情を浮かべている。
観客がこれほど少ないのにも関わらず、会場を盛り上げようと懸命に踊る
海宝やパレードのダンサーの姿を見ていると、切なくて胸が締め付けられる。
旅先の寂れた遊園地で味わうのと同じ種類の感覚である。
中国の威信を懸けた一大イベント・上海万博の会場において、
こんな気分を味わうことになるとは思ってもみなかった。
空気が一変したのはその直後。
パビリオンが並ぶエリアに向かって歩みを進めると…。
活況を呈するコカコーラ館。
ここへ来てようやく万博らしい雰囲気になってきた。
凄い行列だったのでパスしたが、試飲できるのかどうかが気になる。
石油館、国家電網館、鉄道館など、産業系のパビリオンが続々と姿を現す。
特に石油館は大盛況で、5時半を回っているにも関わらず2時間半待ちの表示。
―そろそろどこかのパビリオンに入ってみよう。
日本産業館。
どんな内容なのか気になっていたし、1時間待ちなら許容範囲だろう。
行列の最後尾に加わり、食生活の話など他愛もない会話をしながら列が進むのを待つ。
実際には30分ほどで中に入ることができた。
シアターに入る前、「空耳アワー」みたいな安っぽいプロモーション映像を見ながら
待っている間はやや不安に駆られたが、その後シアターに映し出された映像に驚愕。
眼鏡の要らない3D。日本の最先端の映像技術、その実力を思い知らされた。
シアターの後は出展企業ごとの部屋でイメージ映像を順番に見て回るという流れだが、
シアターのあの映像を見せられた後では正直どれもインパクトに欠ける。
以上、わかり辛い表現ですまない。
―午後7時過ぎ。日本産業館を出ると、すっかり日が暮れていた。
フェリーに乗って黄浦江を渡り、各国のパビリオンがある浦東側へ。
夜の万博。夜空に浮かぶアーチが美しい。
そろそろ腹が減ってきたので、フェリーを下りた場所から最も近い食堂へ入ることにする。
目の前にあったのは、アフリカ料理のレストラン。この辺はアフリカエリアのようだ。
万博へ来たら普段味わえないものを食べたいと思っていたので、この展開は最高形に近い。
看板には「レストラン&バー」なんて書いてあったが、
実際に入ってみると中は軽いノリのファストフードチェーンだった。
ダチョウサンドのセットにバドワイザー(万博缶)。
ダチョウの肉は鳥類とは思えない力強い食感。味は良くも悪くもクセがない。
アフリカ料理と言いながら、味付けは明らかに中華風だった。花椒の味とかするし(笑)。
アフリカ連合館。
国や地域のパビリオンを見てこそ正真正銘の万博デビューと言えるだろう。
胸の鼓動を抑えながら、中へ入る。
「…!!」
アフリカ各国のコンパクトなブースが並んでいる。
記念すべき初の「訪問国」は…?
モザンビークだった。
タンザニア、エチオピア、マラウイ…その後も秒単位で「訪問国」が増えていく。
スタンプラリー的なアイテム「万博パスポート」を持ってたらもっと楽しかっただろう。
会場の土産物屋ではどこも売り切れだったが、どうにかして手に入れたい。
ジンバブエのブース。各国のブースは大体このくらいのサイズ。
一時期凄まじいインフレで話題になったジンバブエドルをお土産で売ってたら即買いしてただろう。
アフリカ連合館だけで数十ヶ国。
「訪問国」を覚えたり数えたりするのは早々に諦めた。
アフリカ連合館を一通り回ったところで、今度は国家単独のパビリオンへ。
南アフリカ館。
既に閉まっていたが、中のワインバーで一杯飲んでみたかった。
そしてワールドカップのマスコットキャラはちっとも可愛くない。
エジプト館。
南アフリカに続き、わりとメジャーな国を制覇。いい感じじゃないか。
とても貴重な(と思われる)黄金の仮面が展示されていた。
スロヴェニア館。ヨーロッパ初訪問。
「I FEEL SLOVENIA.」このキャッチコピーしかり、館内の妖しい色使いの
照明しかり、ラブホと同じセンスを感じたのは欲求不満の表れだろうか。
―ついにタイムアップ。
時間は午後10時前。その後訪れたパビリオンはいずれも閉館していた。
最後に中国館を遠巻きから撮影。万博へ来たことを改めて実感できた。
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まず、各パビリオンの特色ある建築を外から眺めるだけで楽しい。
そして中に入っても楽しい。何か特別なものがあるわけではないが、
普段全く接点のない遠い国の雰囲気を気軽に味わうことができる。
いくら経済がグローバル化したとはいえ、普通に暮らしてたら
モザンビークやジンバブエに接する機会などなかなかないだろう。
「明日万博行こーぜ!」こんな軽いノリで万博へ行けるのは上海市民の特権である。
少なくとも夕方なら余裕で入れるし、当日券も現地で簡単に手に入る。
早ければ今週末にでも再訪したい。
#日曜万博(万博2回目1) |
5月30日(日)。
先週に続き、夕方から万博へ行ってきた。
思い立ったらすぐ万博。世界が注目する一大イベントに
軽い散歩の感覚で行ける、この特権を無駄にしない手はない。
ちなみに、今回の仲間は女性ブロガー「上海っ子」さん。(http://ameblo.jp/shanghaikko)
3人の女の子と行った前回に続き、リア充っぷりは何気に維持。
よく言えば「万博 de デート」、悪く言えば「万博商法」だな(笑)。
前回同様、西蔵南路の企業館エリアから入場。
オーロラ館。
テーマは「玉」で、館内にはたくさんの玉が展示されていた。
ところで、オーロラって何のメーカーだっけ…。(正解はOA機器)
次に訪れたのは、中国船舶館。
西蔵南路の入口から入ると一番最初に見える巨大な建物である。
原油タンカーや農業船などのリアルなミニチュア模型が子供心をくすぐる。
意外に待たされたという言い方もできるが、
ここまではそれぞれ数分待ちで入ることに成功。
次の目標は、船舶館の近くにある中国航空館。
この調子で軽く制覇しよう…と思いきや、入口には長蛇の列。1時間半待ちらしい。
1時間半はちょっと辛いなぁ。中国航空館は諦めて、対岸の浦東側へ渡ろう。
ところが、フェリー乗り場にも長い行列ができている。
…え、フェリーに乗るのに30分待ちだと!?
申し訳ないけど、ただ船を待つためだけに30分も費やしていられない。
行列から抜け出して近くのバス停へ向かう。陸路に変更だ!
無料のバスで地下トンネルを潜り、対岸へ。
バスの方が確実に早いし空いてる。
―国家パビリオンがある浦東側。
上海っ子さん、一番最初に見えたところへ入りましょう。
カタール館。
人生初万博の上海っ子さんにとって、めでたい(?)「初訪問国」である。
いや、僕の「初訪問国」だってアフリカ連合館のモザンビークですから…。
「…!!」
カタール、いいじゃん。
館内は凄く綺麗で、エキゾチックな雰囲気に溢れている。
今までは「サッカーの相手」ぐらいの認識しかなかったが、
こうして見てみるとカタールも実に魅力溢れる一国家である。
♪アイヤーアイヤー…
カタール館を出ると、アラブ系の人々が歌を歌いながら通りを練り歩いているのが見えた。
どうやらこの人たちはアラブ連合館から出てきたようだ。いかにも万博らしい雰囲気。
トルクメニスタン館。
鮮やかな緑のライトアップが美しい。
館内の至るところに国のトップと思しき人物の肖像画が散りばめられている。
(ベルディムハメドフ大統領)
なるほど、ここはそういう国だったのか。実にわかりやすい。
―この偉い人のグッズなんて売ってたりしないだろうか。
軽い気持ちでお土産コーナーを覗いてみる。
「…!?」
シブい色取りのイスラム帽が売っている。
え、これ100元もするの? おじさん、もうちょっと安くしてよ…。
購入(笑)。
普通ならせいぜい10元程度の帽子を100元も出して。
でも買わずにはいられなかった。財布に伸びる手を止めることができなかった。
だって、トルクメニスタンだぜ?
後で振り返ってどうしてもあの帽子が欲しくなっても、現地へ行く以外に手に入れる術がない。
一方、僕が生涯で実際にトルクメニスタンを訪れる機会は恐らくゼロだろう。
すなわち、今この瞬間を逃したら一生手に入らない。
100元から帽子そのものの価値を差し引いた残りはこの「希少価値」である。
多くの人は僕のことを愚か者と笑うかもしれないが、僕は微塵も後悔していない。
心の中はむしろ満足感で満たされている。
サービスのキーホルダーは上海っ子さんに1個あげた。