#上海の麺(古北の蘭州ラーメン) |
古北新区・水城南路の「万科広場」周辺は、大勢の
日本人駐在員とその家族が暮らす、典型的な「日本人街」。
飲食店を中心に日本語の看板が軒を連ね、日本人の奥様方が
買い物帰りに談笑したり、子ども達が広場で楽しそうに遊んでいる
光景は、まさに日本の住宅地そのもの。
日本国内においても、ここより「日本らしくない」街はいくらでもある。
そんな「万科広場」に、バリバリの中国ローカル食堂が突如現れた。
「西北園牛肉麺」。
他の街ではごく見慣れた青い看板も、
古北のど真ん中で見ると、途轍もなく違和感を感じる。
最近できたばかりだが、周辺で働く一般の中国人にとっては待望のオープンだったに違いない。
何しろ、これまでは日本人向け〜中国の富裕層向けの高い店しかなかったわけだから。
かくいう僕自身も、会社の飲み会でもない限り、
この辺で飯を食べる機会は全くと言っていいほどない。
メニューは豊富で、蘭州ラーメン以外にも新疆拌麺や羊肉串など
中国西北地方、いわゆる「西域」の大衆料理を多数取り揃えている。
今回は初めてなので、普通の蘭州ラーメン(牛肉麺)を。
…あ、香菜は抜いてね。
「牛肉麺」。(6元)
恐らく麺は茹で置きしてあるのだろう。注文してからものの1分で出てきた。
両手で丼を抱え、まずはスープから。
「…!!」
旨い。お湯みたいな味気ないスープの蘭州ラーメンも多い中、
ここのスープはなかなかコクがあってイケる。牛骨の旨味。
洛陽の刀削麺ほどの旨さではないが、系統としては近い。
滑らかで喉越しのよい麺。
卓上の唐辛子と黒酢をかければ、数段グレードアップした味わいに。
焦げた唐辛子の香ばしい香りがスープの旨味をぐっと引き立て、黒酢の酸味で味が引き締まる。
最後の一滴までスープを飲み干し、大満足。
古北を起点に動くことが多い僕にとって、この店は使える。
ただ、ランチ限定だ。
入り口の冷蔵庫や店内の様子を見る限りでは、酒類は置いていない。
ビールさえ置いてあれば、羊肉串とペアで「飲み屋使い」もできて完璧なんだが…。
酒の有無をちゃんと確認するためにも、近いうちに再訪したい。
#西蔵インスパイア |
上海に来て既に2年8ヶ月。
最近は路線バスで街を移動することが多くなった。
先日、古北から路線バスに乗ったとき、ある食堂の鮮やかな看板が目に留まった。
目を凝らしてよく見てみると、そこは何と「チベット料理屋」だった。
自称「駐在員トラベラー」、しかも中国国内を専門とする僕にとって、チベットは憧れの地。
去年のようにキナ臭い事件さえ起きなければ、年内にでも行ってみたいと思っている。
そんなチベットの味が、上海にいながらにして味わうことができるのだ。
というわけで昨日の夜、憧れのチベット料理屋に突撃してきた。
場所は水城路×天山路。
「扎西隆達」。
入り口に入った瞬間、芳しいお香の香りが鼻を抜ける。
そして、階段で2階に上ると…
「ようこそ!」
チベット語の威勢のいい挨拶とともに、民族衣装を着たお兄さんが
僕の首に白いレースをかけてきた。チベット気分、早くも全開。
…ところが、店内をよく見ると、客は僕以外に誰もいない。
その代わり、大勢の従業員が隅の席でくつろいでいる。
店の内装も、チベットらしい雰囲気。
店一番のお薦め「生烤羊肉」を頼もうとしたら、既に売り切れだった。
客が全然いないので少し心配したが、僕が来る時間が遅かったのだろう。
ビールは普通に「青島純生」。ラサビールはあいにく置いていなかった。
青島も冷えたのは置いていないと聞いて少々萎えたが、
外が寒いので、苦にならず飲めるほどの温度になっている。
チベットの特産「鹿角菜」。
苦味や臭みは特に感じられず、淡く爽やかな香り。
海藻みたいな食感で、それこそ海藻サラダみたいな感覚で
美味しく食べられる。この草が水の下ではなく、山の上に
生えていると聞いて、チベットの自然の神秘に深く感じ入る。
「日本語で"歓迎光臨"は何て言うんですか?」
「"いらっしゃいませ"。」「"イラシャマセ"。」
チベット族の店員と軽く会話しながら、メインディッシュの到着を待つ。
メインディッシュは「生烤牛肉」。
「…!!」
驚くほど柔らかい。
この牛もチベット産で、本当にチベットから空輸しているという。
これが「チベットビーフ」ってやつか…。
確かに、日本の牛とも、欧米の牛とも、中国の牛とも違う味。
何というか、まろやかな味だ。脂肪は少なく牛特有の旨味も薄いが、
こうして豪快に焼いてワシワシ食べるにはちょうどいいかもしれない。
日本の高級和牛で全く同じ食べ方をしたら、すぐに胃もたれしそうだ。
味付けはクミンと唐辛子。辛さは新疆の味付けよりも大人しい。
ある瞬間、4人の店員が僕のテーブルの前に並んだ。
真ん中辺の男は3杯の酒を載せたお盆を持っている。
「これ、飲んで!」
いきなり、チベットの儀式が始まった。
梅酒のように甘い果実酒が、小さい器に3杯。
言われるままに右手の薬指を酒につけて離し、酒を一気飲みする。
1杯目は、天地に。
2杯目は、父母に。
3杯目は、友達に。
3杯目を飲み干した瞬間、4人の男たちが大声で大合唱を始めた。
「…!!!」
鳥肌が立った。
何を言っているのかは全然わからない。ただ、自分が
目一杯の歓迎を受けていることだけは十分に感じ取れる。
厳かな雰囲気で、カメラは向けられない。
「ザシデレー!」
歌が終わった。「ザシデレー」はチベット語で「吉祥如意」という意味。
凄い。これがチベットか。
目を丸くして驚くと同時に、たった一人の客にさえ
ここまで厚い歓迎を表わしてくれる人の温かさに感激を覚える。
僕が店に入ったのは午後10時前だったが、もっと早い時間帯
(6時〜7時頃)に来れば、チベット族のライブショーが見られるという。
これは是非時間を合わせて再訪したい。
また、チベット料理屋はこの店以外にも上海市内に3軒ほどあるという話も聞いた。
体育館と、あとどこだったっけ…時間があれば別の店も回ってみたい。
チベットへの憧れは強まるばかりである。
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遅い時間になったので、久しぶりにサウナに泊まる。
延安西路×虹中路、最近リニューアルした「金林雨大浴場」。
小南国よりもローカル色が強いが、熱い風呂もあるし
普通に素泊まりする分には全然問題ない。